Monologue

11.ロボットの社会(2020/04/19)

 さて、ロボット中心の社会が訪れることはあるのでしょうか。ロボットの特性と人間の特性を比較して考えてみたいと思います。
 
1)人間の特性

 8.思考力(2019/9/6)の中で、人間の思考力を10種類の能力に分けて説明しましたが、人間には、思考力を含めて、以下の6種類の能力があります。
 (1)思考力:10種類の能力があります。
 (2)精神力:思考制御力、忍耐力、気力・胆力等があります。
 (3)運動能力:走る、投げる、打つ、躱す(かわす)等があります。
 (4)コミュニケーション力:文章力、表現力、傾聴力、交渉力等があります。
 (5)人間力:判断・決断力、行動力、包容力、人間的な魅力等があります。
 (6)社会力:友人・知人、地位、財力、組織力等があります。
 思考力の10種類と被った表現もありますが、例えば、表現力とは、思考力での場合は、頭で考えることが可能な範囲の表現力ですが、コミュニケーション力での場合は、身体を使った表現、物を使った表現等の幅広い意味での表現力を表します。人間の能力は、頭で考える思考力だけでなく、それを支える精神力があって、身体を使う運動能力があり、それを使ってのコミュニケーション力があり、個人としての人間力があり、更に、生まれてからそれまでに蓄積された全ての力を活かして組織として活動することができます。
 人間の特性とは、1人ひとりに能力の違いがあり、意識の違いがあって、個性があって、1人だけではなく、組織としても活動できるということになります。また、組織と組織が協力することで重層的な活動ができるということにあります。
 1人ひとりの人間は、間違えることもあり、いつ倒れるかも分からず、能力の優劣もありますが、社会全体として支えあうことができる仕組みを築き上げることができます。人間の身体が、脳によってすべてが支配されているのではなく、脳、各臓器、骨、筋肉、血管、皮膚等が自立して活動し、ホルモンや神経伝達物質等のメッセージ物質をやり取りしながら活動しているのに似ています。また、各器官の元となっている細胞は、毎日少しずつ入れ替わっているのも、人間社会の構成要員である人が入れ替わっているのと似ています。
 人間社会は、人間の特性を生かした社会と言えます。柔軟性が無くなった器官があるように、成功体験の呪縛にとらわれて硬直化してしまった組織、失敗体験に委縮してしまった組織もありますが、失敗を修正する機能、現状を改善する機能、無いものを創造する機能を持った組織もあります。1人ひとりの個性を活かし、永く生きながらえることのできる社会の構築が可能です。

2)ロボットの特性

 ロボットは、人間や動物に似たものもありますが、産業用ロボットのように人間と全く似ていないものもあります。しかし、いずれの場合も、機械(センサー等の情報入力機能と動力等の出力機能があります)と知能(入力に応じて出力を考える機能であって、人工知能の様にいわれることが多いですが、単純な機能しかない場合もあります)の2つで構成されています。また、ロボット同士が繋がる機能を持っていることもあります。似たものに、コンピューターという概念もありますが、コンピューターも何かしらの入力に対して、何かしらの出力を行うものということですので、ここでは、ロボットの1つの形態として捉えることとします。
 人間の能力が6種類で表されるのに対して、ロボットは、繋がる機能を知能の1つと考えると、その特性は、機械と知能の2つで表せます。そのロボットを作った人によって、信頼性が異なるかもしれませんが、人間と違い、同じロボットが沢山存在できるのも1つの特徴ですし、後から何台でも増やすことができます。また、人間の個性と同じように、沢山の種類のロボットがあり、その違いは、人間同士の違いの比ではなく、単純なものからとても複雑なものまで、とても大きな違いがあります。
 ロボットにも人間と同じように、将来的には、心を持ったロボットが生まれるかもしれません。今のロボットは、人間に勝つことのできる将棋ロボットや囲碁ロボットがありますが、1つの機能しかありません。しかし、やろうとしているゲームが将棋なのか囲碁なのかを識別することができる機能が開発されたとすると、将棋も囲碁も強いロボットが出来上がります。こうした機能が数限りなく足されていけば、点の機能が線となり、面となり得ると思われます。つまり、階層化することで、ロボットも複雑な処理が可能になり得るということになります。
 もし、ロボットの社会が出来上がったとしたら、それは単一階層的な社会だと考えられます。例えば、現在の人工知能には、ビッグデータを学習して、人間以上の処理が可能な機能があります。ロボット同士をつなげば、複雑な処理が可能かもしれませんが、それぞれのロボットが学習した結果を活かしあうネットワークを形成し組織化した場合、それぞれのロボットが個々に判断する機能があったとしても、それぞれの結果を活かすか否かを判断するロボットが存在し、階層化することになり、結果として、頂点に位置するロボットが現れるように思います。
 ロボットは、間違えることや壊れることが無いとは言いませんが、間違いを修正する機能があれば、同じ間違いを繰り返すことはありません。壊れた機械を置き換える機能を予め用意することができれば、ほとんど永遠に活動し続けることが可能かもしれません。人間の様に疲れたりしませんので、成長する事しかできません。人間らしいロボットを目指して疲れる機能を作り込むことも可能かもしれませんが、そのロボットを人間が必要とするとは思えません。研究としてあり得るかもしれませんが、実社会には受け入れられません。
 つまり、ロボットは単体で機能するか、繋げた場合は、階層的に機能すると考えられます。階層化したロボットは、人間と同じように多次元の機能を有することが求められることはなく、色々なゲームに対応できるロボット、色々な言語を翻訳できるロボットの様に一次元的なものか、2つの分野ができる2次元的な機能が可能なロボットの様に、対応できる分野が限定されると考えられます。あまり多くの分野に対応できるロボットは、人間が使いこなせないからです。

3)空気を読む

 人間は、空気を読んだ行動が可能です。TPOをわきまえた行動ができます。しかし、ロボットは、ある分野において人間よりも優秀な処理ができるとしても、与えられた情報に対してベストと思える回答を出すことが出来たとしても、同じ入力情報に対しては、いつでも同じ回答を出力します。
 空気を読めるロボットを開発することも可能かもしれませんが、研究的には面白いかもしれませんが、実社会において必要とされるとは思えません。人間が使いこなせないロボットが作られることは無いと思います。
 人間にもアスペルガー症候群と言われる人が居ます。自閉症スペクトラムの1つで、人間の個性の1つと理解できます。自閉症スペクトラムには、様々な症状とそのレベルに違いがあり、通常の社会性に支障がある場合もありますが、支障なく生活できる人も多くいます。アスペルガー症候群の人は、コミュニケーションの質的障害があって空気が読めない人もいますが、独自のこだわりを持ち特定の分野では驚くべき才能を発揮する人もいます。真相は分かりませんが、天才数学者のアインシュタイン、発明王のエジソン、マイクロソフトのビル・ゲイツもアスペルガー症候群だと言われています。
 人間にも、優れた才能を発揮する人に対して、ロボットの様だという形容詞が冠せられる場合があります。多くの場合、何かに優れていて、疲れ知らずの様な人で、空気を読めない人が該当するように思います。しかし、ロボットの様な人であっても、人間社会の一員として、その役割を果たすことができます。前述の天才達も人間社会に役立つと共に大きな足跡を残しています。
 小説においては、人間がロボットに操られる社会が描かれることもありますが、現実には考えられません。将来において、ロボットがその優れた能力を活かして、人間社会に溶け込んでくると考えられますが、空気の読めないロボットには、人間を支配することはできません。あくまで、人間の道具であったり、助言者という位置づけになります。前述の階層を深くした複雑なロボットは、人間社会に受け入れられません。

4)共存する社会

 多くのロボットが人間社会に溶け込んでくるというのは、避けられそうにありません。人間の社会は、多様性を持ち得ますので、文明的なものを利用しない社会もあり得ます。例えば、アーミッシュと呼ばれる集団が現実に居ます。しかし、大多数の人々は、技術革新を伴う文明社会を受け入れて生活をしており、ロボットと共存する社会を受け入れていかざるを得ないと思われます。
 産業用ロボットが工場で多くの作業員の仕事を奪ったように、これから多くの分野で、ロボットが活用されると思われますが、ロボットは、あくまで道具または助言者です。人間社会を豊かにする位置付けでなければ、その存在意義はありません。ロボット3原則という言葉がありますが、実社会に適用されていく過程において、法律の整備も進んでくることと思われます。実際に、自動車の自動運転においては、様々な法制化が検討されています。
 ロボットが人間と共存する社会が来た場合、単純な仕事はロボットにさせて、高度な仕事を人間が行うようにしていくべきだという人もいますが、そんな単純な話ではないと思います。なぜなら、先ず人間社会があって、それを支えるためにロボットがあるべきだからです。人間には、多様な社会が存在するはずです。ロボットを完全に排除した社会も存在するでしょうし、部分的に活用する社会も存在し、法で許される範囲で全面的に活用を進める社会も存在すると考えられます。
 ロボットは、機械と知能の2つの能力で表されますが、人間は、6種類の能力がありますし、その能力の1つひとつにおいても、多様な能力が考えられます。思考力においては10種類があります。能力分類の考え方は、人によって異なると思いますが、ここでは私の分類方法で話を進めています。また、個々の能力は、自閉症スペクトラムの様に様々なレベルが考えられます。つまり、星の数ほどの異なった人間が存在します。
 人間社会は、ロボットで埋めきることができないほどの多様性があります。高度な思考に関しては、人間の方が優れているかもしれませんが、それだけではありません。思考力だけでなく、様々な能力を活かすことも可能だと思います。ただし、個性は必要だと思います。個性が無ければ、よほど優秀でない限り、ロボットで代用可能かもしれません。ロボットに無い個性があれば、それを活かす方法は、本人次第の様に思います。それは、ロボットの居ない人間社会においても同じかもしれません。人間らしさ、その人らしさが求められということです。

5)活かされる人間

 新しい商品開発、新規事業の立ち上げ等において、最低限必要なのは、他との違いがあることです。既存の商品、既存の仕事においても同様に、他との差別化は生き残るために必須です。他より優れているということもありますが、多と違う何かがある方が重要な気がします。
 商品を選ぶ場合、多くの人は、絶対評価ではなく相対評価で判断します。例えば、2つの食品を比較する場合、より美味しい商品、より安い商品、より長持ちする商品、評判が良い商品等で選択しますが、食べたことが無い商品というのも魅力的です。組織を考える場合も同様に、優秀な人を加えたいということが多いですが、組織に居ないタイプの人というのも魅力的です。ロボットであれば、なるべく優秀なロボットという評価で選ぶと思いますが、人間であれば、強固な組織とするために、魅力的な人を加えるという選択肢もあり得ます。例えば、1つの組織に同種の能力において優秀な人が沢山要らないケースもあります。活かされる人間とは、人間の能力の優劣だけでは決めきれないということです。
 しかし、多くの分野で、多くの人に求められる習慣もあります。それは、真心を込めた対応をするということです。これは、能力に関わらず、全ての人が考えることができる最大の武器でもあります。極端な話かもしれませんが、天賦の才を持った重度のアスペルガー症候群の人では、真心を込めた対応が難しいかもしれません。6種類の全ての能力が低い人であっても、真心のこもった優れた対応ができる人もいます。活かされる人間とは、何かの能力が優れている人、他人に無い個性がある人、そして真心のこもった対応ができる人ではないかと思います。
 真心のこもった対応とは、どういうことでしょうか。簡単に説明しようとすると、相手の立場に立った考え方等ができる人というような話です。しかし、相手の立場に立った考えができる人は、沢山います。つまり、より多くの視点で、より深く考えることができるかどうかということが課題になります。例えば、何かネット上のサービスを提供する新事業を考えたとします。ここで、利用者の立場に立ったサービスを考えるのは、当たり前だと言えます。先ずは、全ての登場人物を考える必要があります。映画の説明には、題名だけでなく、あらすじがあって、登場人物があって、登場人物の相関図があります。良いサービスとするには、良いストーリーが描けなければなりません。新サービスの登場人物は、利用者だけではありません。利用者も1種類ではないと思いますし、提供する人もいます。サービスメニューがよくても、提供する人が楽しくなければ良いサービスが永続的に提供できないかもしれません。利用者がサービスに気付いてくれなければ、良いサービスであっても使われません。どうやって知ってもらい、どうやってサービスの良さを理解してもらい、どうやって長く使ってもらえるかが重要になります。どんなに良いサービスを世に中で初めて提供したとしたとしても、競合他社に真似をされたり、代替する安価なサービスで脅かされるかもしれません。良い商品があっても、利用者が増えたら対応できないのでは話になりませんし、運転資金が足らなくては、そもそも事業が継続できません。沢山の登場人物が居ることが分かります。
 3.プロジェクト管理(2019/1/16)の中で、最も重要なのが「意図」だと説明しました。意図は、「成功する意図」と「失敗しない意図」の2種類があり、これが考えられていないプロジェクトは成功しません。多くの視点でより深く考えることができるかが重要になりますが、意図が考え抜かれていなければ成功はしません。真心のこもった対応とは、相手の気持ちを考えるという単純なことだけではなく、成功するストーリーを考えているかということになります。もちろん、完璧なストーリーを考えられる人は稀です。しかし、何処まで真心を込められるかということが大事です。あきらめずに、何度でも考えを練り直すことができるかということになります。
 データ分析も同じです。真心のこもったデータ分析を行なうようにしてください。私は、妄想するのが好きです。幼い時からあれやこれやと妄想をしていました。大人になって妄想癖が活かされているように思います。ただし、幼い時と違い、妄想と現実を重ねて考えることができるようになりました。真心のこもった実現可能なサービスを提供するというのが、私の信条です。
 ロボットは心を持つことができるかもしれませんが、真心を持つことは難しいだろうと思います。真心のこもった対応は、人間の特権ではないでしょうか。