Monologue

2.3つの注意点(2019/1/15)

1)話題の整理

会議をする場合、議題を明確にし、時間内に目的の結論を得ることが求められます。つまり、複数の人が同じ目的に対して、異なる視点で、会話によって議事をし進行することになります。
これは、プロジェクトの問題を議論する場合であっても、データ分析の課題整理をする場合であっても同様です。ここで、複数の人が異なる視点で議論していく場合に注意しなければならないのが、議論が平行性を辿る等により目的に行きつかないということと、議論の視点がずれていることに気が付かないで議論をしてしまっているということがあげられます。1つ目の問題は、ファシリテーターのような人が議事をコントロールする等が必要になりますが、ここでは、2つ目の議論の視点がずれていないかという問題に対して説明しようと思います。
同じことについて議論をしているのであるが、なぜか意見の一致を見ないとか、議論が発散してしまうということがあります。これらは、議論の視点がずれているということに原因があることが多いと考えられます。それでは、最もありそうなパターンを3つ紹介しますので、注意してください。もちろん、データ分析においても重要なことになります。

2)目的と手段

最も多い間違いであって、分かっているつもりだが知らないうちに間違ってしまっているというのが、この「目的と手段」の間違いです。目的が明確になっていて、その解決策となる手段の議論に移っているのであれば、問題は発生しませんが、目的の話をしているのに、手段が話題になることがよくあります。また、目的を成し遂げようとして手段が定められた後、実行に移している段階で、手段が目的化してしまっている場合もよくあります。論外ではありますが、目的と手段の区別がつかない人も居ます。
当たり前ですが、目的があって、それを達成するために手段はあります。例えば、情報システムは道具ですので、何かを達成するための手段です。情報システムの開発者にとっては、そのシステムは開発目的ではあるかもしれませんが、いずれにしても開発者にととって、そのシステム開発は、お金儲けの手段であり、お金儲け自体もその人の人生を豊かにするための手段でしかないのかもしれません。本来の真の目的を明確にしておくことは、選択をする時の一番の指標になりますし、ブレが無くなる鍵です。目的を達成する為に状況が変われば手段の見直しは避けられませんが、目的が変わることはありません。
目的が決まれば、その手段を明確にし、中間目標を明確にすることは重要です。目的だけでは、何処に進むのかが分からなくなってしまいます。目的を深堀し共有し、目的を達成する為の手段と目標を明確にすることがプロジェクトを成功させる鍵になります。
データ分析と関係のない話をしているように思われた方もいるかもしれませんが、データ分析も同じことなのです。例えば、データ分析では、よく指標という言葉がでてきますが、指標は何かをチェックするための手段です。その何かとは、目的であって、目的から外れないようにチェックするために指標が存在します。
データ分析と聞いて、既に何かデータがあって、何かしらの統計手法を使って分析すれば良いというように考える人も居るかもしれませんが、それは、データ分析の1パターンでしかありません。例えば、何かしらの課題があって事業の運営状況を調査するためのデータ分析であれば、最初に事業自体の分析があって、データの収集やそのチェック指標の作成とその評価が必要になりますし、永続的なチェック機能としての役割を求められるかもしれません。データ分析のシステム開発をするというケースもあり得ます。
つまり、データ分析では、目的と手段の整理が重要になるということです。

3)一般論と個別論

総論賛成各論反対、又は各論賛成総論反対ということがよくあります。この問題が発生した場合は、どちらの議論をしているのかを明確にする必要があります。
議論対象が明確になっていて、それが個別の問題である場合は、一般論は参考に留めるべきであって、解決手段の決定においては、個別の課題解決を優先する必要があります。しかし、議論対象が全体に及ぶ場合においては、一般論としての共感を得ることが重要で、個別の問題は例外対応として解決策を講じる必要があります。但し、この議論自体が一般論ですので、全ての問題に適用できるかは分かりません。
データ分析においては、主観論と客観論という議論において、圧倒的に客観論が指示されます。「データが示す通り!」という言い方がありますが、この場合、データ分析が即ち客観的であるということを意味しています。主観論が個別論で、客観論が一般論だと考えるとしっくりくる気もしますが、データ分析は、一般論によるものなのでしょうか?
例えば、アンケート調査をした結果として、データ整理の結果を客観的な結論としていることが多いですが、果たしてそうでしょうか?アンケートの質問に作為は無かったと言えるのでしょうか?質問項目に偏りは無いか?項目の選択肢に作為性は無いか?等、不明な点が無いかを確認してみる必要があります。
また、ある問題の分析結果に対して、ある新聞には30%もの賛成者が居たと記載してあり、他の新聞には30%しか賛成者が居なかったと記載してあった場合、その30%という数字はどの様に捉えればよいのでしょうか?データは客観的であっても、それを見るのは人間だということを忘れてはいけません。
データを作成する時に作為的であったり、データを見せる時に作為的であったりすることはよくあることです。つまり、データ分析は、客観的であるとは言い切れないと理解しておいてください。また、客観的にチェックできるようにデータを取り扱うという心構えも重要ですが、一般論と個別論と区別した場合の個別論のデータもチェックできるようにすることも重要です。

4)蓋然性と可能性

数パーセントの確率で発生する事柄をあなたならどう判断しますか?無視しますか?それとも無視しませんか?
これは、その議論の目的によって変わります。方向性の検討においては、無視しますが、リスク管理の検討においては。無視できません。
蓋然性と可能性という言葉があります。蓋然性とは、その事象が起こりうる確からしさを意味し、可能性とは0%か否かを意味します。宝くじに当たるか否かは、蓋然性は無いとなりますが、可能性はあるということになります。
方向性の検討においては、蓋然性で検討するのが妥当ですが、リスク管理においては、可能性で検討します。方向性の検討については、最も発生する確率の高い事象を中心に議論しますが、リスク管理においては、その費用対効果またはダメージの大きさで判断します。例えば、津波が来る可能性が低い場合、そこに住む民家においては、来た場合の被害が最小限になるように対応しますが、原子力発電所においては、被害が発生しないか発生しても最低限にできる対策が求められます。
リスク管理は、リスクの種類として、災害・故障・過失・故意の4種類があり、その対策としては、予防・検知・回復の3段階があります。また、予防については、抑制と防止の2種類があります。例えば、燃えにくい素材で作るという場合と燃えない素材で作るという場合等です。
データ分析においても、方向性の検討は重要ですし、どちらの方向を妥当と考えるかの検定処理は、統計処理の十八番です。また、リスク管理は、データ分析の重要なテーマです。データ分析をする目的に応じて、一般論と個別論を踏まえたデータ分析ができるように注意してください。